一人のプログラマのプライドはそう容易くお金では量れない(アカデミックな雰囲気で)

なぜこの機能はこんなに早くて、

他の機能はウンザリするほど遅いのかを。

そのときには、答える。

プログラミングスキルの差としか言えませんと。

プログラマーの誇りを見せ付けろ - レベルエンター山本大のブログ


今回 ひがさんのエントリ を読んで、背景や方法は異なるものの、この考え方に、科学的管理法を提唱したフレデリックテーラーを思い出させられた。そしていつもは勉強になると思い読ませてもらっているが、今回のひがさんの意見は参考にはできるけれど、一つの意見として受け取る。まあ、そのそのとおり、一つの意見だよ。

山本さんの気持ちは良くわかるけど、プログラマの誇りを見せ付けたいなら、単に良いものを作るだけではだめです。プログラミングの価値を高い金に結びつける必要があります。

プログラミングに誇りを持ちたいなら単価を上げること - yvsu pron. yas

「人の誇り==高い金」には必ずしもあてはまらないでしょう。
これは、山本さんのどのような言葉に対して向けられたのかというと

僕は今回の案件で、システムのレスポンスに徹底的にこだわってる。

それには理由がある。

それは、プログラマの誇りを見せたいからだ。

プログラマーの誇りを見せ付けろ - レベルエンター山本大のブログ

この言葉は技術者の立場にたってみれば、頷ける言葉。
しかし・・・

だれでも、自分のことを高く評価してほしいと願っているはずです。

プログラミングに誇りを持ちたいなら単価を上げること - yvsu pron. yas

これも解る。けれども

そして、その評価が、金に結びつかないと、その努力は維持できないのです。

良い仕事をしても、だめな仕事をしても、もらう報酬が同じなら、人は努力しなくなる。努力しないから、良いコードはかけない。

プログラミングに誇りを持ちたいなら単価を上げること - yvsu pron. yas

果たしてそうだろうか。そういう人だけとは言えないと思う。

ベテランでも、だめなコードを書く人はいるでしょう。それは、素質だとかの問題ではありません。余り金がもらえないから、人は自然に努力しなくなり、だから、だめなコードになってしまうのです。

プログラミングに誇りを持ちたいなら単価を上げること - yvsu pron. yas

こんな感じでエントリの半分位までは、ひがさんの、完全な合理性を持った「経済人(economic man)」モデルの立場にたった話が続いている。
余り金がもらえないと自然に努力しなくなるというのは、純粋にオープンソースフリーソフトウェアを作っている人達に、言えるだろうか。
中にはそういう人もいるのだろうが、目の前のお金だけをモチベーションとしている人達だけではないはず。
「経済人(economic man)」モデルを否定するわけではないが、管理論の研究・発展が進む歴史の中において「自己実現人」モデルといった考え方も見出されて来た。
自己実現人」モデルを理論的に説明しているのが、マズロー自己実現理論欲求段階説)。

マズローは、人間の基本的欲求を低次から

1. 生理的欲求
2. 安全の欲求
3. 所属と愛の欲求
4. 承認の欲求
5. 自己実現の欲求

の5段階に分類した。

自己実現理論 - Wikipedia

それぞれの欲求は、下のように分類されている。

生理的欲求 - 生命維持のための食欲・性欲・睡眠欲等の本能的・根源的な欲求
安全の欲求 - 衣類・住居など、安定・安全な状態を得ようとする欲求
所属と愛の欲求 - 集団に属したい、誰かに愛されたいといった欲求
承認の欲求 - 自分が集団から価値ある存在と認められ、尊敬されることを求める欲求 
自己実現の欲求 - 自分の能力・可能性を発揮し、創作的活動や自己の成長を図りたいと思う欲求

自己実現理論 - Wikipedia

これらは上から下にいくに従って順に高次の欲求となり、人は低次の欲求が満たされると、一段上の欲求が現れる。
この理論は、実験や観察による科学的根拠が認められているわけではないが、僕を含む人々にとって、直感的にアピールするものがあるはず。
そしてこのような考えの下では、カネといったものは、生理的欲求とか安全の欲求に分類される。
勿論にこれにも反論はあって、これに当てはまらない人もいる。

良いプログラムを書いても貧乏なら、それは、自己満足に過ぎないのですよ。どれくらい自分が認められているのかを客観的に示すのは、それに対する報酬なのです。だから、

報酬にこだわらないとプログラマの地位は低下するよ - yvsu pron. yas

ときに職場社会の中では、カネの多少が「社会的認知」の尺度になることがあり、カネが承認の欲求と捉えられることもある。
けれど、今回の山本さんのエントリには、カネよりも単純に自己満足を選んだニュアンスを感じたな。

なぜこの機能はこんなに早くて、

他の機能はウンザリするほど遅いのかを。

そのときには、答える。

プログラミングスキルの差としか言えませんと。

プログラマーの誇りを見せ付けろ - レベルエンター山本大のブログ

この、冒頭に挙げさせもらった山本さんの言葉、それから「プログラマの誇り」といった言葉からは、自身の自己実現の欲求を充足したいのか、あるいは山本さんの会社での立場から、山本さんの会社を認めさせたいという承認の欲求を充足させたいのか、あるいはもっと単純に「プログラマの誇り(プライド)」を見せたかったんだろうな、としか感じなかった。
人の欲求には様々あって、皆が同じではない。ひがさんの考えはそのうちの一つ。
人の心が一人の意見に染まらないことは、たった今、僕もあなたも、そして皆が証明している。
プライドが自己満足であったとしてもその価値はその人が一番感じている。